結局、万能なものなんて何も無い。
そして最後の起こるのは万能だと思われている奴らの醜い戦いだけ。
02.屈辱
僕は授業を聞きながら、ぼーっとしていた。
予習して知っている内容をわざわざ繰り返す必要なんてないからだ。
確かに優等生を演じられているのは僕の努力の結果もあるが資質や天性のものだって加わっている。
だから、一回ぐらいを授業を聞き逃そうと僕の表層や評判は揺るがないし、成績だって変わらない。
「ねぇ、リドルー。」
隣の女子が頬を染めて僕に話しかけてきた。
振り返ると、昨日のことを思い出した。
昨日の虐めの主犯の女だ。よく、図々しく話しかけてきたものだ。
きっと、顔に自信がある所為だと僕は思った。彼女は確かに綺麗な顔立ちをしていたからだ。
「なんだい?今は授業中だよ。」
受け入れるフリをして、さりげなく釘を刺す。彼女は一瞬、迷ったようだった。
それほどまでに僕に伝えたい内容なんてないだろう。
どうせ、私情を挟んだくだらない話だ。
「のこと、どう思ってるの?」
僕の予想は当たっていたが、この内容は予想外だった。
くだらないが、答える義務のある内容で僕が最も聞かれることを恐れていたことだった。
「如何してそんなこと聞くのかな?」
僕が聞くと、彼女はさっと顔を伏せた。
そして、挙動不審に目を宙に彷徨わせる。
明らかに猫を被ってるし、僕に媚を売っているつもりらしい。
他の奴になら通じたかもしれないが、僕にそれは通じない。
「・・・あ・・・ほら、あの子はスリザリンの恥じゃない?・・・だから・・・」
女子生徒はしどろもどろになりながら答えた。
スリザリンの恥、というのは確かに的を得ている。
穢れたちが崇高なるスリザリン寮にいていいはずがない。
だけど、優等生である僕に聞いたところで答えは決まっていた。
「・・・僕は一応、同じ寮の人間として尊重しているよ。」
どんな些細な理由にせよ、組み分け帽子はあいつをスリザリンに選んだ。
穢れた血であるあいつ。あいつがそれを気にした素振りだってないし、自分から言ったこともない。
それは自分も気にしている所為ではないかと僕は思う。
現にあいつは虐められていることだって、今まで隠してきた。
それはあいつのプライドが高いからではないか。
僕はあいつが穢れた血であることはそれほど気にしていなかった。
確かに視界に入れば、腹が立つし、今すぐにでも殺したいほど憎んでる。
けれど、僕の先祖が残したあれを見つければ、穢れた血を全て抹殺できるのだ。
あれを見つけたら、僕は一番最初に彼女を殺そう。そう、心に誓っていた。
その日、僕は遅くまで宿題をしていた。
元来、勉強はあまり好きではなかったし、もともとできる性質だったので、面倒くさいと思ってた。
けれど、やはり優等生を見せ付けておかないと、と思う。
いつか僕はヴォルデモートという名でこの世を恐怖に落とすのだから。
だから、僕は宿題は出された日に終わらせるように心がけていた。
ひとけがなくなり、もう夜も深くなった頃。
僕はようやく宿題を終わらせて、部屋に戻った。
部屋に戻り、ルームメイトが寝ている傍でおかしな点がないかと、僕は宿題を睨めっこをする。
読んでいくうちに、何かがおかしいと思った。
そして、最後になってようやく分かった。一枚足りない。
僕はすぐに談話室へ行った。
すると、そこには誰かがいた。
薄暗くてすぐには分からなかったが、どうやら何かを熱心に読んでいるようだった。
「ねぇ、ここで今日宿題に出た・・・」
僕は聞こうとした口を閉じた。
顔を上げた人物が最も嫌いなアレだったからだ。
「これ、リドルの?」
は紙を一瞥して、僕の方に差し出した。
僕は憤りで震えそうになる手を必死に押さえながら、それを受け取った。
「・・・ありがとう・・・」
一応、礼を言って僕はすぐに背を向けた。
を二人っきりでいる空間から抜け出したかった。
「・・・それ、おかしいわよ。」
彼女は背後でそう言った。
僕は構わず、寝室へと向かった。
彼女如きの人間に間違いを指摘されるわけがないと、自惚れていた。
部屋に帰ってから確認すると、その宿題の答えは確かにおかしかった。
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2006/07/01 Written by mizuna akiou.