ハローグッバイ 河原で眠るのは気持ちいい。 風が涼しいし、木陰なら最高だと私は思う。 「何やってんだ?」 いつものように草原で寝転んでいると、聞きなれた声がして、目を開くとエドが覗き込んでいた。 「・・なんだ、エドか・・・。」 私はふぅと息をついて、また目を閉じた。 「なんだとはなんだよ。」 エドはそういいながら、特に怒ってないらしい。 軽く風を感じて目をあけると、エドが隣に座ってた。 逢うのは何ヶ月ぶりだろう? 「久しぶり。」 小さく呟くように言ってみると、エドが今更かよ、と苦笑した。 いつも会ってるような返事をしたのは、もう何ヶ月も会っていないのに懐かしさなんて感じなかった。 きっとエドの身長が伸びてないからに違いないと、自己完結すると、エドが心を悟ったように睨んできた。 身長に関してのことを嗅ぎつけるのは相変わらず犬以上だ。 「・・・今度はどこ壊したの?」 そう聞いてみると、エドは顔を顰めた。 「壊したこと前提かよ。」 心外だとばかりに、エドが私を見た。 「違うの?」 壊したときしか帰ってこないくせに。 心の中でそう付け足して、空を見上げた。 リゼンブールらしい穏やかな空が広がってる。 「・・・違わねえけど・・・。」 広い空を見ながら、エドの返答に私は起き上がる。 「ほら、そうでしょ?」 私がエドを覗き込んで勝ち誇ったように笑うと、エドは苦々しく笑った。 だって、エドは一つのことに熱中したら、それしか見えないんだから。 目標をたくさん持つなんて器用なことは出来ない。 どんな目標を持つにしてもその目標の終着点は同じに違いない。 家族に会いに行くことは、きっとその目標とは掛け離れているから、会いにくるだけの理由で寄るはずがない。 「今日もウィンリィのとこ?」 そう聞くとエドは短く頷いた。 だったら、アルもあそこにいるんだなあ、と考える。 私はエドが機械鎧になって以来、アルに会った事がなかった。 でも、会いたくない理由があるんだとなんとなく感じていた。 「アルは元気?」 でも、気になるから聞いてみた。 「ああ、元気だよ。」 エドが一瞬愁いを帯びたように見えた。 私は目を見張ったが、どうやら見間違いだったようだ。 エドはじっと見つめる私の視線にすぐ気付いて、なんだよと不可解そうに私を見た。 「なんでもない。」 私はそう答え、私たちは黙り込んだ。 もともと、二人とも会話するほどネタがなかったのかもしれない。 本来なら旅の話とか聞くんだろうけど、なんとなく聞きづらくて聞けなかった。 するとエドはいきなり立ち上がった。 「そろそろアルが心配するから行くよ。」 「・・・ブラコン。」 エドがコートについた草や土を払いよけるのを見ていると思った事が口に出てしまった。 「・・・うるせー。ほっとけ。」 エドはコートを着直しながら答えた。 そんなに怒らないんだな、と少し驚きを感じながら、私はエドを見上げた。 すると、エドが私の頭を押さえつけた。 「わっ、何すんの!」 言わずとも、ブラコンって言ったことの仕返しだろう。 彼の手が離れ、私が頭を上げたときにはもう彼は持ち前の身軽さで、すでに畦道へと上がっていた。 「じゃあな、!」 笑って叫んで手を振る彼に恨めしさを覚えながらも、以前と変わらず無邪気に笑う彼の姿に毒気を抜かれたのか。 仕方なく私も笑って手を振った。エドは笑ってみせると、そのまま畦道へと消えた。 こうやって、いつも会えるみたいな受け答えをするけど、次の会うのは何ヶ月も先だろう。 それでも次に会うときも昨日会ったみたいに明日会うみたいに、話をするに違いない。 そう考えながら、私は叢に寝転んだ。相変わらず、リゼンブールの大きな空が広がっている。 私は眠気を感じて、そっと目を閉じた。 2006-07-26 Written by mizuna akiou . |